旧青山別邸は国からも登録有形文化財にも指定されている北海道屈指の美術豪邸です。
その一部を写真を交えてご紹介します。
正面奥の襖絵は、川合玉堂の弟子、山内多門思案の力作。 力強く、客用玄関にふさわしい縁起ものの黒松を用いて 繁栄と力を表しております。
中国八仙人の優雅さを、島崎柳塢の温雅な心と円熟した技とで、素朴な幸福感を漂わせながらも、13枚の襖絵の中に生気と情感を見事に盛り込んでいる大作。 また、天井の幅広の神代杉、杉の組子の欄間が春慶塗 の柱と見事に調和がとれています。 八仙人とは、中国開元・天宝の頃の人間ばなれした賢人の意です。
形状だけではなく配色も斬新な浴場の天井。 当時の明かり取りとしてはハイカラなもの。 天井板はしずくが、直接身体に落ちない様、 1枚の板を蒸し、まげてあります。
黒木欽堂の喜びに満ちた力強い筆の走りと、欄間の3枚の紫檀の彫刻が見事に調和した、落ち着きのある日本間。
洗面台は御影石と大理石を練り合わせ、砥石で研ぎ出し仕上げたものです。
宝石のようなにしん御殿(旧青山別邸)において、生活空間もやはり芸術でした。 有田焼の便器。
長押しは、檜材の一本物。(約12m60cm) ガラス越しに見えるのは、枯山水の庭園。
帝院会員でもあった書の大家 比田井天来の力強い書です。三代目 青山民治が当邸の完成に感激し詠んだ漢詩を比田井天来が青山家に逗留して書き、素晴らしいふすまが 出来上がりました。4枚のふすまの書が、日本海に向かって永遠に語りかけている見事な作品。
モダンで上品な洋間の造りは当時では画期的なもの。そのこだわりは窓の桟やガラスなど細部に いたるまでの心のいれよう。
1間だけ洋間を作ると言うのが当時の風流。
山岡鉄舟 書
重厚な造りの屋敷にあって、開放感を演出する吹き抜けの天井。
孔雀や蝶が羽を広げた模様を木目で表現したという、棟梁斉藤子之助苦心の作、たも材の階段。 この建物に使われている唯一北海道の木材、その“こぶ”の部分だけが使われており、23石(1石約750kg)の材料を集めて、ようやく完成しました。 1段作成するのに、1週間という長い工程を要し、また、上に行くほど段差が少なくなっているという繊細な段差になっています。たも材の木目を使って仕上げたこれほど見事な作品は、現在では他に類を見ず、にしん御殿(旧青山別邸)にあってその美しさを象徴する作品のひとつです。
「人の一生をあでやかな牡丹の花で表現した」と作者の 渡風が語った様に、つぼみから散るまでを4枚のふすま絵に 華麗に描いています。 牡丹は青山政恵が特に好んだ花でした。右よりつぼみ、七分咲き、満開、散る、散る時にまたつぼみ子孫繁栄を願って描かれたもの。
窓からは日本海が一望できます。枯山水庭園を見下ろすこともできます。
狩野派の流れを汲む日本画の松本楓湖、今中素友、長野草風、野沢蓼州、渡風などの絵師たちがその腕前を競って扇絵を描き上げました。当時の風流と作者の温かいつながりが伝わってくる「扇の間」です。